天儀歴1016年。天儀異聞録が描かれる、およそ3年前のこと。
冥越(めいえつ)と東房(とうぼう)を跨って点在する、隠れ里の多い東房側の国境付近を根城とする、血生臭い連中の名がいつの間にか轟いていた。彼らを「ただの野盗崩れ」と評する者もおれば、「世に鉄槌を下さんとする一団あり」と評する者もいた。
ある日、理由もなく村を焼かれ、家族や友を失った少年が、連中の放つ血煙を遡り、ついに首領と参謀に出会う。少年は揺るぎない決意を胸に、連中に声をかけた。
彼らの名は「唐紅の血族」。その物語とは、いかに。